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マーケティングチーム
ワンフロアで家族の距離感が近い平屋。コンパクトで無駄なスペースができにくい、階段がなく子どもも安全といったメリットがありますが、地震に強いという特徴もあります。
本記事では、平屋の実例を紹介するほか、メリットとデメリット、価格を抑えるポイントなどについても解説します。平屋に興味のある方はぜひ参考にしてください。
平屋にするにはいくつかメリットがありますが、代表的な5つについて解説します。
平屋にする第一のメリットは、ワンフロアで暮らすため家族の距離感が近いことです。2階建て以上の住宅に比べると、それぞれの部屋の距離が近く、家族を感じやすい間取り構成になります。
子どもが自室にいても気配を感じることができ、子どもの孤立を防ぐこともできます。家族が近くにいるため会話が生まれやすく、コミュニケーションが取りやすいのもメリットです。
家庭内事故でもっとも多いのは転倒や転落です。足を踏み外す、すべって落ちる、つまづいてぶつけるなど、階段で起きる事故はさまざまです。中には死亡につながるケースもあります。
特に小さな子どもや高齢者がいる家庭は階段の事故に気を付けたいものですが、平屋の場合は階段がないためその必要がありません。つまり平屋は、住宅の中に危険な場所が少なく、子どもや高齢者のいる家庭も安心して暮らせるのです。
平屋の特徴は、ワンフロアに住まいの機能が収まっていることです。そのため、生活動線が短くなり、無駄なスペースも生まれにくくなります。
例えば2階建て住宅の場合であれば、階段スペース、階段の踊り場、階段につながる廊下、階段の下など、居住スペース以外の場所が必要です。もちろん廊下や階段は住宅内を移動するのに必要不可欠な場所ですが、平屋の場合はこうしたスペースが少ないため、スペースの有効活用にもなります。
平屋には2階がない分、構造がシンプルです。また上階からの荷重負担がないため、1階にかかる負担は少なくなります。そのため、2階建て以上の住宅よりも劣化が抑制されます。
また、外壁の張り替えや再塗装、屋根のメンテナンスなどを行う際は、足場を展開する必要があります。しかし、2階のない平屋の場合、高さがない分足場の展開が少なくて済みます。つまり、足場を組む費用が抑えられ、メンテナンス費用が低くなるのです。
平屋は2階建て以上の住宅と比べて、建物の重心が低い位置にあります。そのため、地面の揺れが建物に伝わりにくく、地震などの揺れに強いのが特徴です。
また、平屋は正方形や長方形といったシンプルな構造にしやすく、振動が分散されやすい住宅構造になります。そのため、地震における倒壊の危険性が低くなります。
平屋にするのにメリットがあるのと同じように、デメリットもあります。代表的な5つのデメリットについて解説します。
2階建ての場合は生活するのに必要なリビングやキッチン、トイレ、家族の居室などを1階と2階に分けて設計することができます。しかし平屋の場合はそれらの生活空間をワンフロアに収めるため、2階建て住宅以上の建築面積(建物を真上から見た面積)が必要になります。
もちろん、部屋が小さくていい、広くなくていいといった場合は広い土地ではなくてもかまいません。しかし、家族がゆったり暮らす平屋を建てるには、それなりに広い土地が必要と考えられます。
1階に居住スペースがすべてある平屋は、空き巣や強盗などのリスクが高いといわれます。窓がすべて1階にあるため、侵入できる場所が多いからです。
また平屋のメリットの1つであるワンフロアにまとまっていることも、ターゲットになりやすい理由です。金品を置いている場所が特定しやすく、犯行に時間がかかりにくいからです。安全性を確保するために、入念な防犯対策が欠かせません。
家を建てるなら、日当たりや風通しがよい物件にしたいと誰もが考えるものです。日当たりや風通しは住まいの快適性に大きく関わるからです。
例えば、日当たりのよい住宅は、部屋が明るい上に開放感もあります。そのため、室内でもリラックスして過ごすことができます。また風通しがよければ、室内の湿気が排出され、室内環境が整えられます。カビやダニの発生なども抑えられ、建物を長持ちさせることにもつながります。
しかし周囲に建物がある場合、平屋は1階部分しかないため、日当たりや風通しが悪い傾向があります。そのため、天窓や高窓を採用して窓の高さを工夫したり、中庭をつくったり、隣家との距離を空けたりして、採光と通風を確保する必要があります。
平屋は建物自体の高さが低く、窓がすべて1階にあります。そのため、前の道路を歩いている人や隣家から家の中が見えてしまうという懸念があります。つまり、平屋はプライバシーを確保するのが2階建てに比べて難しい住宅なのです。
道路や隣家との位置関係にもよりますが、家族のプライバシーを守るための工夫が必要です。例えば、大きめの軒を設けたり、庭を中庭にしたりして視線を遮ることが考えられます。また、日差しとの関係もありますが、横長の高窓を設けるのも1つの方法です。歩いている人から見えるのは天井だけで、家族の姿は見えなくなります。
屋外からは鏡のように反射するミラーガラスを使用して眺望を確保しつつプライバシーを高めるのもよいでしょう。目隠しになるような柵やフェンスを設置したり、庭木を配置したりすると、防犯性も同時に高めることができます。
居住スペースがすべて1階にある平屋は、水害が発生した際の逃げ場がありません。そのため、水害に弱いのもデメリットの1つです。
避難して家族に被害がなかったとしても、浸水により家具や家電など家の中のものが破損してしまう可能性もあります。つまり、平屋は水害発生時の被害が大きいと考えられるのです。
平屋を建てる場合は、ハザードマップなどで被災想定を確認し、水害が起きにくい土地を選ぶことが重要です。すでに所有している土地の水害リスクが高い場合、基礎の高さを上げるといった水害対策も検討することになります。
ここまで平屋のメリットとデメリットを紹介しましたが、気になるのは価格ではないでしょうか。2階部分がない平屋は、2階建て住宅より価格は安くなりそうに思えますが、実際の相場価格はどうなのか見ていきましょう。
国土交通省が発表した2024年の「住宅着工統計」(https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001279.html)によると、新築一戸建て住宅(個人所有・持家)の1m2あたりの工事費予定額は26万円(全国平均)です。これを坪単価にするために3.3をかけると、85.8万円となります。
これに対して、同じ床面積・設備仕様の平屋の場合、坪単価は1~2割ほど高くなるといわれます。そのため、平屋を建てる際の目安となる坪単価は94万円~102万円程度です。3LDKの平屋一軒家(30坪)を建てるとすると、2,820万~3,060万円が相場ということになります。
ただし平屋を建てる場合でも、2階建て以上の住宅を建てる場合でも、導入する住宅設備や採用する建材、人件費の地域水準などによって建築コストが異なるのが通常です。個別の条件によって価格は異なりますので、実際の建築費用は建築会社に見積もりを出してもらいましょう。
平屋と2階建て住宅のどちらが高いか気になる方も多いでしょうが、基本的に延床面積が大きいほうが建築コストは高くなるのが通常です。しかし前項で紹介したように、坪単価にすると平屋のほうが1~2割ほど高くなります。これはどうしてでしょうか。
それは、屋根や基礎部分といった部分に関わる建築コストが高いからです。例えば、延床面積が30坪の平屋と2階建て住宅を比較してみましょう。
この場合、建築面積(真上から見た面積)は、平屋の場合は30坪で、2階建て住宅の場合はおよそ15坪になります。ここで注目したいのが、平屋のほうが屋根と基礎部分といった部分はおよそ2倍になっている点です。屋根や基礎部分の建築コストが高いため、同じ延床面積の場合は平屋のほうが、坪単価が高くなってしまうのです。
ちなみに、2階建て住宅と同じ延床面積の場合、平屋の屋根面積は40%ほど大きくなるといわれています。
平屋は一般的な2階建て住宅に比べて坪単価が高くなる傾向がありますが、コストを低く抑えることもできます。建築コストを抑える代表的な5つのポイントについて解説します。
こだわりの強い住宅は個性が表れていて素敵に見えますが、コストを抑えるといった点ではシンプルな間取りにするのが正解です。複雑な構成にするほど壁や柱などの建材の使用量が増えてしまい、建築コストが高くなっていきます。
生活動線にも配慮した間取りが実現する平屋ですから、廊下や壁の位置も工夫し、無駄なスペースを減らすことでコストを抑えるようにしましょう。例えば、各部屋を回遊動線でつなげる、水回りを1か所にまとめるといったアイデアもおすすめです。
日差しや眺望、通風などに活躍する窓はたくさんあっても困らないものですが、建築コストを抑えるのであれば必要最低限にしたいものです。窓自体の購入代金に加えて、設置工事費用などもかさんでしまいます。例えば、北側には窓ではなく換気口をつけるといったようにすると、コストを下げることができます。
夏の暑さが厳しい地域では、南向きの窓を大きくすると、冷房代が高くなる可能性もあります。こうした事情なども考えて、最適な窓の数と位置、サイズを検討しましょう。
また、ドアや収納扉などの建具の数も少ないほうがコストを抑えることができます。特に平屋の場合はワンフロアに生活空間をまとめるため、建具の数を減らしやすい間取りにできます。例えば、リビングと寝室や子ども部屋をつなげることで、建具の数を減らせます。独立型のキッチンではなく、オープンキッチンにするのもおすすめです。
部屋の数が多いほど、壁やドア、収納スペースなどが必要になり、その分建築コストが積み重なっていきます。そのため、家族にとって適切な部屋の広さや数、レイアウトなどを検討しましょう。
例えば、書斎が欲しいといった場合は、個室タイプではなく、オープンタイプや半個室タイプにすることで建築コストを下げることができます。また、子ども一人ひとりに個室を与えるのではなく、間仕切りをうまく使うことで部屋の数を減らすこともできます。
洋服や暮らしに使う道具、思い出の品などをしまう収納スペースは、生活空間をスッキリさせるためにも必要なものです。しかし収納スペースが多ければ多いほどよいわけではなく、たくさんあればよいわけでもありません。暮らしに合わない収納は無駄なスペースになってしまいます。
新居の収納スペースを考える際は、家族構成にあった収納量や用途を適切に把握し、将来のことも考えて検討しましょう。例えば、子どもの数や年齢などによっても、適切な収納スペースの容量は異なります。将来的に納戸または洋室に分けやすい広めの部屋を設けるといったように、住まいの可変性を見据えて設計するのも1つの考え方です。
住宅のコスパを考慮して建てるには、躯体に木造を選ぶことが第一選択です。鉄骨造に比べて、建築コストを抑えられるだけでなく、木造軸組工法では間取りの自由度も高まるからです。
具体的なコストの差をまとめたのが以下の表です。
躯体の種類 | 1m2の単価(単位:千円) |
木造・木骨モルタル造 | 176.2 |
鉄骨造 | 241.5 |
出典:国税局「建物の標準的な建築価額表」から令和4年分を抜粋
また、木材は調湿や断熱の効果も期待でき、快適な室内環境を実現しやすくなるでしょう。
注文住宅で平屋を建てる際のポイントについて紹介しましたが、この項目では実際にどのような平屋が建てられているのか、実例を見ていきましょう。
まず紹介するのはアメリカ西海岸風のサーファーズハウスです。白を基調にしたカラーリングで、切妻屋根が印象的です。
カバードポーチとウッドデッキが西海岸スタイルを強調。リビングから直接ウッドデッキに出ることもできます。
アイランド型キッチンとダイニングを横付けにしているのが特徴です。料理から後片付けまで、横に移動するだけでできるよう家事動線に配慮してレイアウトしています。
次に紹介するのは、愛犬のためにドッグランを設けたコテージ風の「愛犬と暮らす平屋」です。
ドッグランの代わりにもなる22.8坪の庭には、木製のフェンスを設置。防犯性もプライバシー性も高めています。
勾配天井をLDKに採用しており、縦にも横にも空間に広がりを持たせているのが特徴です。
リゾート感あふれる落ち着いた雰囲気の「明るく開放的な平屋」です。
縦長の窓を採用することで、採光を確保しながらプライバシーにも配慮しています。
高い天井が開放感を演出しています。LDKや寝室には天窓を設けており、平屋では確保するのが難しい採光も問題ありません。
家族の距離感が近い、子どもや高齢者が危険を感じる場所が少ないといったように、平屋にはメリットが多彩にあります。その一方、坪単価が高い、防犯面が弱いといった欠点もありますが、工夫やアイデア次第で補うことができます。そのため、平屋は家族のつながりを感じたい方におすすめです。
今回の記事では3つの実例も紹介しました。平屋のよさに加えて、デメリットに対応するためのアイデア集としても参考にしてください。
なおハウスジャパンでは、これまで数多くの平屋を建築している実績をもとに、「平屋のお家づくり相談会」を開催しています。平屋の特徴や魅力を紹介するほか、相談にも応じています。
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